静岡でテレワークが定着しない理由とは?働き方を左右する情報設計の視点

静岡県は、通信環境やデジタル活用の基盤という点で、全国的にも恵まれた地域です。行政や企業のデジタル施策も着実に進んでおり、「デジタルが弱い県」という印象は当てはまりません。それにもかかわらず、働き方の面では、テレワークが十分に定着しているとは言い難い状況が続いています。

通信インフラや制度は整っているのに、なぜ働き方は変わらないのか。

本コラムでは、静岡においてテレワークが定着しにくい理由を整理しながら、企業がこれから考えるべき「情報設計」の視点を解説します。


静岡県でテレワークは本当に不要なのか?

静岡は暮らしやすい地域です。実際、テレワークを前提に移住する人や、首都圏企業に勤めながら県内で生活するケースも見られます。

一方で、県内企業では「導入したが定着しなかった」「一時的に取り入れたものの、元に戻してしまった」という声も少なくありません。

コロナ禍の2021年ごろ、静岡県民のテレワーク実施経験率は約27%で、全国平均とほぼ同水準でした。しかし、近年では14%前後まで低下し、全国平均を下回る水準となっています。

背景には、「それで困っていない」という実感があります。

静岡県の平均通勤時間は片道約31分で、全国平均より低く、東京圏の約49分と比べて大きな差があります。出社の負担が比較的小さいため、働き方を抜本的に変える動機が生まれにくいのです。

さらに、静岡県は製造業の比率が高く、就業者の約4人に1人が製造業に従事しています。県内経済は現場型産業に強く依存しており、物理的な出社を前提とする業務が多い構造です。

しかし、ここで重要なのは「テレワークが必要かどうか」ではありません。

重要なのは、出社しなければ業務が止まる設計になっていないかという点です。

テレワークは「制度」ではなく「設計」の問題

テレワークが上手くいかない企業には共通点があります。

出社前提の業務設計

紙書類や押印、口頭での確認、業務フローが特定の人に依存していること。これらが残ったままだと、場所を変えただけで業務が滞りやすくなります。

ITツールを入れただけ

チャットやWeb会議を導入しても、情報の流れが整理されていなければ効果は限定的です。システムが分断されたままでは情報が追えず、結果として「出社した方が効率的だ」と判断されてしまいます。

どこでも同じように仕事ができる状態が重要

テレワークを機能させるためには、場所に関係なく仕事が進む状態を作る必要があります。必要な情報にすぐアクセスでき、承認や進捗が可視化され、誰が見ても状況が分かる。こうした土台が整っていなければ、テレワークは定着しません。

実際、テレワークが定着している企業では、情報の所在や判断基準が明確で、出社・在宅を問わず同じ業務フローで仕事が進む仕組みが整えられています。


テレワークを可能にする4つの基盤

1. データの共有性

業務データが個人や部署に分散している状態は、テレワークについてどうこう言う以前の問題です。

まずは「会社として管理すべきデータは何か」を明確にし、正しいデータの所在を一本化することが出発点です。

SharePoint、Googleドライブ、Boxなどはいずれも一元管理を実現できます。

・Microsoft 365を導入している企業であれば、追加費用なしで利用できるSharePointは、コストパフォーマンスに優れています。
・Googleドライブは検索性と共同編集に強く、スピード感を重視するチームに向いています。
・Boxは、データ保持やアクセス制御などのガバナンス機能が充実しており、内部統制や監査要件に対応しやすい設計です。


重要なのはツールでは無く、正しく最新のデータが一か所にまとめられているかどうかです。

注意点として、個人向けのOneDriveやGoogleドライブ等、個人向けサービスの利用は避けましょう。業務データが個人所有になると、退職時に資産が失われてしまいます。

2. 業務フローの可視化

業務がどこで止まり、誰の判断待ちなのかが見えない状態では、管理職の貴重な時間は付加価値を産まない進捗確認に消費されてしまいます。

重要なのは、仕事を「人」ではなく「状態」で管理することです。
未着手・確認待ち・差戻し・承認待ち・完了など、状態が見えるだけで属人化は大幅に減ります。

このようなタスク管理ツールはこの状態管理を実現するための手段なのですが、しかし多くの企業で定着に失敗します。最大の理由は「入力してもらえない」からです。

従業員の日常業務の中心は、メールやチャットへの対応です。そこから離れて別のツールに改めて入力する運用は、ほぼ確実に定着しません。普段使っているメールやチャットから、そのままタスク登録できる仕組みを整えましょう。二重入力をなくすことで、はじめて業務フローの可視化が現実的になります。

例えば、Microsoft 365環境であればTeamsのチャットをそのままPlannerへ登録する方法、ユーザー数の多いTrelloであればメール転送やSlack連携などを活用する方法があります。重要なのはツールの種類ではなく、日常業務の流れと分断しない設計にすることです。

3. 承認・判断のデジタル化

押印や紙の回覧を前提とした承認フローは、テレワークの障壁であると同時に、意思決定スピードを大きく低下させる要因です。承認が止まるたびに、案件対応や顧客対応も連動して遅れ、結果として機会損失につながってしまいます。

これを解決すると謳うワークフロー製品が世には数多く存在します。「既存のExcel申請書をそのまま使える」とか「承認時に自動で捺印できる」というのが売り文句だったりします。ただ、既存のフォーマットを使うとなるとスマホでは見にくく、わざわざPCを使う必要があったりします。

しかし本質はなんでしょうか?「誰が・何を根拠に・いつ判断したのか」が常に追跡できる状態をつくることです。極限まで単純化すると「〇〇の案件進めて良いですか?」というチャットに対して、上司が「いいね」マークを送る、これだけで承認の意思表示を示せます。目指すのはこのスピードです。

書類にハンコの画像が付いているかどうかは全くの些事なのです。

ちなみに、Microsoft 365に含まれるチャットツールTeamsには承認フローの機能が標準で含まれています。

セキュアなアクセス環境

社内ネットワークや社内PCだけを前提とした業務設計では、テレワーク環境において情報漏洩リスクが一気に高まります。自宅PCや私物端末、フリーWi-Fiなどを経由したアクセスが増えることで、企業側の管理が及ばない領域が広がるためです。

情報漏洩が発生した場合、問題になるのは技術的な原因ではありません。最終的に問われるのは、「経営者として適切な管理体制を整えていたか」です。対策が不十分であれば、信用低下や取引停止といった経営リスクに直結します。

重要なのは、「誰が・どの端末から・どの情報にアクセスできるか」を明確に管理することです。これにより、万が一の際にも被害範囲を限定し、責任の所在を明確にできます。

クラウドサービスの認証管理やアクセス制御機能を活用すれば、場所に依存しない働き方と情報セキュリティを両立できます。セキュリティ対策はコストではなく、事業継続のための投資として位置づけることが重要です。

実はMicrosoft 365は、アクセス管理・多要素認証・端末制御といった仕組みを一体で提供しており、中小企業でも大企業並みの認証基盤を無理なく構築できる点が大きな強みです。


目標は「テレワーク」ではない

テレワークは目的ではなく、正しく設計された業務や情報の流れが機能した結果として実現する働き方の一つです。情報が整理され、進捗や判断が滞りなく共有できる状態が整ってはじめて、場所に縛られない働き方が可能になります。

そのため、目指すべきは「テレワーク対応」そのものではなく、出社してもしなくても業務が回る状態をつくることです。ITはそのための手段であり、業務設計や情報設計と切り離して考えるべきではありません。現場力の高い企業が多い静岡においても、持続的に働き方を柔軟にするための基盤づくりとして、IT導入を捉えることが重要です。


テレワークも見据えたデジタル化のご相談ならバーチュー

静岡でテレワークが定着しにくい理由は、場所や通信環境ではなく、業務や情報の設計にあります。ツールを導入するだけでは働き方は変わりません。業務フローや情報の流れまで含めて見直すことで、はじめてテレワークは現実的な選択肢になります。

バーチューでは、「出社してもしなくても業務が回る状態」をゴールにしたデジタル設計を支援しています。テレワークをやめてしまった企業、導入したが活用しきれていない企業、これからの働き方に悩んでいる企業は、ぜひ一度ご相談ください。

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